こんにちは、アユム [ @kot_book ] です。
哲学の入門書はたくさんありますが、結局のところ「用語がむずかしいから挫折しちゃう」というケースは少なくありません。
哲学が初めての人にとって、むずかしい用語は大きな壁となって立ちはだかります。
そう考えると、「いかに哲学用語をやさしく解説しているか?」というのが、哲学書選びでは重要です。
今回紹介する『面白いほどよくわかる!哲学の本』は哲学用語の解説が非常に丁寧なので、わりとスラスラ読めます。
わかりやすい用語解説が理解度を高めてくれる
哲学を理解するうえで、用語の理解は必須です。
にもかかわらず、用語の解説がイマイチわかりにくいという入門書も少なくありません。
その点、この本は解説が丁寧でわかりやすいので、スラスラ読めます(なかには解説がわかりにくいページも一部含まれますが)。
ずっと意味不明だった「形而上学」をすんなり理解
哲学にはむずかしい用語がたくさんありますが、特に「形而上学」(けいじじょうがく)という用語には苦手意識をずっと持っていました。
一般的な解説がいかにわかりにくいか。ここにWikipediaの「形而上学」のページの一文を引用したいと思います。
形而上学は感覚ないし経験を超え出でた世界を真実在とし、その世界の普遍的な原理について理性(延いてはロゴス)的な思惟によって認識しようとする学問ないし哲学の一分野である。
哲学にちょっと興味を持った人が「形而上学ってどんな意味だろう?」と思ってネット検索すると、このWikipediaが上位に表示されます。
コレを見たらきっと「うわあ…全然わかんね…」となってしまい、せっかく哲学に傾きかけた興味が一気に失われてしまいます。
哲学を専門に学んだ人ならともかく、哲学初心者がこの文を見て意味を理解するのは不可能でしょう。
さて、このわかりにくい解説を踏まえたうえで、本書における「形而上学」の解説を引用したいと思います(少し長いです)。
形而上学
万学の祖アリストテレスは、目に見える形を超えたものについても感心をもち、それを解き明かそうとしました。その対象とは、存在、あらゆることの原理、物の本質、普遍、神などです。
こうした問題に関する草稿が、彼の死後一つの書物にまとめられます。その際、「自然(フィジカ)についての書」の後(メタ)に位置づけられたので、その書は「メタフィジカ」と名付けられました。
この言葉はやがて「自然を超えた」という意味に変わっていき、日本語では形而上学と訳されたのです。
途中でフィジカやメタフィジカなどのむずかしそうな用語が出てきましたが、ここで重要なのは形而上学には「自然を超えた」という意味があるということです。
もちろん、学問的な形而上学という言葉にはもっと深い意味があるんだろうと思いますが、哲学入門者がざっくり意味を知っておくにはこれで十分でしょう。
「形而上学は原理や神など、目に見えない自然を超えたものをテーマにしているんだな」ということがこの本で理解できるわけです。
ガリレオがなぜすごいのか?がわかる
ガリレオ・ガリレイは地動説を唱えて宗教裁判にかけられたというエピソードが有名です。「それでも地球はまわっている」という言葉を知っている人も多いでしょう。
そんなガリレオですが、一体なにがすごかったのでしょうか?
その理由を、本書では以下のように解説しています。
ガリレオの生きていた時代は、現実よりも古代からの理論が尊ばれていました。観察した結果が理論に合わない場合、間違っているのは観察のほうだとされていたのです。
そうしたなかで、実験によって仮説を検証することを強調したのは、まぎれもなくガリレオの功績と言えるでしょう。
過去の偉人の功績って、いまの僕たちには当たり前すぎてその凄さがわからないことが多いんですよね。
たとえば、
「ガリレオは実験によって仮説を検証することを重視した」
という解説だけだと、仮説をもとにした実験は小学校の理科の授業でもやっているので「そんなの当たり前じゃん」ぐらいにしか思えません。
しかし、本書の解説を読むと「昔からの理論が重視されていた風潮を打破したからガリレオはすごいんだ」ということがよくわかります。
このように、事実の列挙だけではなく、なぜそれが偉業だと言えるのか?という背景までも解説してくれているのが、本書の優れているところです。
読みやすいレイアウトで、挫折率を下げる
本の良し悪しは内容だけでなく、見やすさも大きく関係しています。
どんなに解説がやさしくても、レイアウトが見にくいと読むのが嫌になってしまうからです。
その点において、この本はレイアウトが非常に見やすく設計されています(あえて解像度を下げています)↓
メインの文章があり、下段には用語解説があります。このようなレイアウトのおかげで、読み手は負担を感じにくく、文章がどれくらいで終わるかもわかるので心理的にラクです。
内容に興味がわかなくても、用語解説だけ読むことで知識を得られることもあります。
また、文章を読んでイマイチ理解できなくても、左側のイラストと図解で納得できることも多いので理解の助けにもなります。
説明文のパンチが弱く、退屈に感じるページも
この本の欠点は、文章が一般向けすぎるということです。
良くいえばクセがなく万人受けする書き方なんですが、悪くいえばパンチが弱い。
あくまでも入門書なので、事実の列挙とわかりやすいたとえ話があれば十分ではあります。
でも、読んでいると少し飽きが生じてくるのも事実で「ページをめくる手が止まらない!」という興奮状態にはなりません。
その点、僕が以前からおすすすめしている以下の本は、グイグイ引き込まれるほど面白いです(クセは強いですが)。

この2冊を同列に比較するのはちょっとナンセンスな気もしますが、読む人に合うか・合わないかという話はどうしても避けることができません。
最初の1冊目としておすすめできる本
今回紹介した『面白いほどよくわかる哲学の本』は、哲学の歴史を丁寧に解説しつつ、現代に生きる僕たちが直面する「仕事」「労働」「死」にまで言及しています。
非常に読みやすく、哲学書の1冊目としてはおすすめできる本です。
ただし、この本は哲学の歴史を順に追って説明していくスタイルなので、途中で飽きが出てくるかもしれません。
「哲学の歴史ってつまらないからちょっとなぁ…」という人は、歴史の流れを無視して、”使える哲学”だけをまとめた以下の本がおすすめ。

ちなみに、どちらの本もKindle Unlimitedで読み放題の対象作品となっています。お得に読めますので、ぜひ読んでみてください。