哲学ってなんとなく知的でかっこいいイメージもあるし、勉強してみたいと思っている人も多いと思います。
でも、いざ哲学関係の本を読むと「うわ…わけわかんない」と挫折すること、いと多し。
おおかたのイメージどおり、哲学について書かれた本は難解なものが多く、ちょっとでもカッコつけて難しい本を買ってしまうと”超絶大後悔”に終わります。
もし、これから哲学の世界に一歩を踏み入れたいと考えているのであれば、入門本の選び方は非常に重要です。
今回おすすめしたいのは、今まで読んだ哲学入門の本で一番わかりやすく、挫折せずに読破できた『史上最強の哲学入門』です。
「わかりやすい」「入門」という言葉に騙されてはいけない
これは哲学関連に限ったことではないですが、入門者向けの本選びというのは非常にむずかしかったりします。
なぜなら、「わかりやすい」「入門」「はじめての」といったフレーズがタイトルについていても、実際にはぜんぜん初心者向けではないことがあるからです。
あと「マンガでわかる」といった本も、実際は文字だらけで内容もむずかしいことが多いので、注意が必要です。
さて、哲学についても同じことがいえます。
入門者向けと思わせておいて、いきなり話が飛躍したり、用語の説明がない本がたくさんあります。
入門レベルに見せたほうが本がよく売れるので、出版社の気持ちはよくわかります。でもそれにまんまとダマされて割りを食うのは、そう、あなたです。
これから哲学を学んでみようという人に、こうした本は「敵でしかありません」。
哲学の本がむずかしいのは、難解な専門用語が原因
哲学は考え方そのものもむずかしいのですが、それ以前に哲学の専門用語がむずかしいです。
たとえば、こんな用語あたりは、私たちを決定的に挫折へと導くでしょう。
- ・被投性
- ・現象学的還元
- ・ラング、パロール
- ・アンガーシュマン
- ・間主観性
実際、これらの用語もかみくだいて説明してくれれば意外とすんなり理解できます。じつはたいした意味ではないからです。
でも、哲学本のほとんどが「なんでわざわざむずかしい言葉使いたがるんだよ」と言いたくなるほど、厄介な説明ばかりです。
だからこそ、こうした難解な用語をきちんと丁寧に説明してくれている本が、入門者には欠かせません。
『史上最強の〜』は、用語の説明も丁寧だし、急な飛躍がない
読書をしていて挫折する要因に「用語がわからない」という以外にも、「話が急に飛躍する」というものがあります。
途中までは理解できていたものの、急に話が飛躍して追いついていけなくなるケースです。
「いやいや、そんなこと本のなかで解説してないよね?なに当然知ってますよね的なトーンで語ってんの」と言いたくなることが、たまにあると思います。
前置きが長くなりましたが、今回おすすめする『史上最強の哲学入門』は、そのような挫折要因がありません。
たとえば、サルトルという哲学者の「自由の刑」という考え方がありますが、これを本書では以下のように解説しています。
自由とは、何が正しいのかわからないのに『好きにしろ』と放り出されてしまった不安定な状態のことである
たとえばの話、どこかに神様がいて、人間に「これが真理ですよ、これがあなたの生きる目的ですよ」とすべてを明らかにしてくれていれば、僕たちは何も悩む必要はなかった。
だが、実際のところ、人間には、そのような真理も生きる目的も与えられていないし、明らかにされてもいない。だから、人間は「何をすべきか」を自分で「決断」して生きていかなくてはならない。
そして、その決断は絶対的に「自由」である。(中略)だが、何を選ぼうと何が正しい選択なのかなんてわからないのだから、10年後、20年後、その選択にゾッとしているかもしれない。
ちょっと長めの引用になりましたが、「自由の刑」についておおよそ理解していただけたかと思います。
むずかしい言葉を使わずに、口語も織り交ぜながら解説してくれているので、戸惑うことなくスラスラ読めるはずです。
時代の流れに沿って、順番に解説してくれる
哲学は、昔の人の考え方を受け継いで、新しい考え方を提唱する学問でもあります。
そして、哲学は、歴史を学ぶ学問でもあります。
だから、一つでも用語の意味がわからないと哲学の流れを追えなくなります。
たとえば、プラトンの「イデア論」という考え方は、後世の哲学者にも大きな影響を与えています。
イデア論がわからないと、あとになって「イデア論?なんだっけこれ?」とつまづくことになるでしょう。
こうしたことがないように、本書では時系列で順番に、丁寧に、解説してくれています。
挫折しやすい本は、一度解説した用語や考え方について触れてくれません。でも、この本は繰り返し解説をしてくれるので安心して身を委ねられます。
突然あらわれる、口語体がツボ
この本の好きなポイントの1つとして、突然あらわれる口語体があります。
真面目に語っていたと思ったのに、急に咆哮したりするのが本書の魅力です。
たとえば、現代キリスト教に大きな影響を与えたアウグスティヌスという人がいるのですが、著者の飲茶さんは、アウグスティヌスについてこんなふうに書いています。
アウグスティヌスはとても正直だった。彼は、自伝で、「性欲、我慢できねええええ!下劣な情欲に燃え上がってましたああ!」的なことを告白してしまうぐらい正直だった。(中略)アウグスティヌスにとって、人間とは「自由意志と欲望を持ち、それを自制することがでいない、か弱い存在」」であったのだ。
こんな感じで急に表現が崩れるので、思わず笑ってしまいます。こんなふうに紹介してくるおかげで、昔の哲学者であっても「同じ人間だったんだなあ」と思えるわけです。
あとは、ルネセンスを「古代の栄光を取り戻そう運動」と解説したり、宗教改革を「教会が免罪符を売りさばくのはいけないと思います運動」と説明しているのもすごく好きです。
最初に読む1冊として、哲学の全体をサラッと知るには超絶おすすめ
『史上最強の哲学入門』は、おそらく名前だけは聞いたことがあるであろう、有名な哲学者とその思想をひととおり取り上げています。
だから、個別の哲学思想や哲学者については深く触れていません。
悪くいえば、読み終わったあと物足りなく感じます。でも、良くいえばもっと哲学のことについて深く知りたくなります。
見方を変えれば、入門書を読んだあとに「物足りないからもっと知りたい」と思わせるのは、非常に大切なポイントなのかもしれません、
もうコレ以上、哲学で挫折したくない!という人に、『史上最強の哲学入門』は満を持しておすすめできます。
あと、これに加えて『哲学用語図鑑』も読んでみると、さらに理解度が深まるでしょう。これも超わかりやすいです。あと、絵がかわいい。