こんにちは、あゆむです。
僕は書店員として2年間仕事をし、そのあと出版社に転職してそこでも2年間ほど働きました。
実際に出版業界で働いてみて思ったのが「専門用語がむずかしい…」ということです。
業界特有の専門用語って覚えるのがけっこう大変ですよね。
というわけで今回は、書店・取次・出版社で働く業界人が知っておくべき専門用語についてまとめました。
解説が薄い部分もあるので参考程度にご覧いただけると幸いです。
数が多いので、必要な用語だけ読みたいという人は、以下の【この記事のもくじ】から飛ぶこともできます。
- NOCS(のっくす)
- ISBN(アイエスビーエヌ)
- 帯(オビ)
- 奥付(おくづけ)
- 本の「委託販売制度」
- 長期委託
- 改訂(かいてい)
- 判型(はんけい)
- 落丁(らくちょう)
- 乱丁(らんちょう)
- 誤植(ごしょく)
- 初版(しょはん)
- 重版(じゅうはん)
- 絶版(ぜっぱん)
- 取次(とりつぎ)
- トーハン
- 大阪屋(おおさかや)
- 日販(にっぱん)
- 太洋社
- 栗田出版販売
- 責任販売制
- フリー入帳
- 部戻し
- SCM銘柄
- グロスチャージ契約
- MPD(株式会社MPD)
- 再販売価格維持制度
- 装丁(そうてい)
- 新書
- 延勘(のべかん)
- 帳合(ちょうあい)
- 断裁(だんさい)
- 面陳(めんちん)
- スリップ(短冊)
- 正味(しょうみ)
- シュリンク
- 書タレ(ショタレ)
- 返品(返本)
- 常備寄託(じょうびきたく)
- 客注
- 買い切り
- 番線
- 指定配本
- 搬入日
- 日販パートナーズ契約
- 見本出し
- 部決(部数決定)
- 音羽グループ
- 一ツ橋グループ
NOCS(のっくす)
「NOCS(のっくす)」とは、日本出版販売株式会社(日販)が全国の書店に提供している情報ネットワークサービスのこと。
日販と取引している書店のパソコンからは、インターネット経由の書籍の検索と発注、注文出荷状況の照会、新刊送品案内、売上と在庫の管理「サポートC」(オプション機能)などを利用できる。
月額サービス利用料金がかかる。
ISBN(アイエスビーエヌ)
「ISBN(アイエスビーエヌ)」は、国際標準図書番号(International Standard Book Number)の略称。
市販されている書籍にコード番号を割り振り、流通を合理化させたもの。基本的には書籍にバーコードという形で付与されている。
国籍コード(日本のコードは4)、出版コード、分類コード、製品コードを含み、コンピューターの読み取りによって、その書籍がどこの出版社から出版されたどのような本かなどがわかるようになっている。
日本では昭和57年から使用を始め、ISBNには新・旧の規格がある。
【旧規格「ISBN-10」】
2006年12月31日までは10桁で表されていた(ISBN-10)。
例)ISBN ◎-▲▲▲▲-■■■■-●
- ◎「グループ記号」→出版物の出版された国や地域、言語圏を表す
- ▲「出版社記号」→出版社ごとに割り振られた番号。出版社の出版点数により異なる
- ■「書名記号」→出版された書籍固有の番号
- ●「チェックデジット」→検査数字。入力した際に誤りがないか確かめるための番号
【新規格「ISBN-13」】
出版社記号が足りなくなってきたため、2007年からは13桁が使用されている(ISBN-13)。
例)ISBN ◯◯◯-◎-▲▲▲▲-■■■■-●
- ◯◯◯「接頭記号」→978または979のいずれかを使用する
- ◎「グループ記号」→出版物の出版された国や地域、言語圏を表す
- ▲「出版社記号」→出版社ごとに割り振られた番号。出版社の出版点数により異なる
- ■「書名記号」→出版された書籍固有の番号
- ●「チェックデジット」→検査数字。入力した際に誤りがないか確かめるための番号
帯(オビ)
「帯(おび)」とは、表紙やカバーに巻く帯状の紙のこと。
書籍の売り文句や推薦文が記され、販売を促進するのに役立つ。
書籍の中には帯が大きく、表紙の役割を担うものも存在する(いわゆる、オビ高)。
コンビニ向けの本などは書店とちがって縦に差して展開されることが多いため、お客さんにきちんと見えるようにオビ高が採用される事が多い。
奥付(おくづけ)
「奥付(おくづけ)」は、本の最後のページに書かれているもの。
主に書籍名、著者名、発行者名(出版会社)、印刷会社名、製本社名、ISBN、発行年月日、版数、定価、著作権表記などを記載したページのことを指す。
このように、奥付には本に関する情報がひととおり記載されている。
いつ出版されたのか?何刷りなのか?などなど、細かい情報を知りたい場合には奥付をチェックする。
本の「委託販売制度」
出版社が書店に本の販売を委託すること。
出版社は基本的に店舗を持たないため、オンライン販売以外に関しては販売を書店に委託する必要がある。
委託販売制度の中で特に注目すべきなのが「返品」である。これは出版社から仕入れた本を、書店は原則として自由に返品できるというもの。
委託には新刊委託、長期委託、常備委託など種類があり、出版社との契約により、返品できる期間が決まる。
返品期間の過ぎた書籍は返品できなくなり、買い取りというカタチをとることになる。
返品期間の過ぎた書籍のことを「ショタレ」と呼ぶ。
通常の小売業界であれば、仕入れた商品は買い取り、売れ残った場合には小売業の在庫となる。
しかし、出版業界においてはこうした買い取りという仕組みは基本的に存在しない(一部の買い取り契約を除く)。
書店は売れると思う本を取次から仕入れ、販売する。
思ったように売れなかった場合は取次に返品する。こうした仕組みがあるからこそ、書店は売れ残りを気にすることなく、仕入れを行うことができるのである。
長期委託
「長期委託」とは、すでに刊行されている本に適用される流通条件のこと。
書店で行われる季節ごとの店頭フェアやセットに対して、委託期間を長く設定したもの。補充義務はない。
長期委託の本の返品期限は4ヶ月〜6ヶ月などが存在する。
改訂(かいてい)
「改訂」とは、書籍などの印刷物において、内容を改めること。
改訂した内容で増刷された書籍を「改訂◯版」という。
本の内容や、装丁、判型などの情報に変更がない場合は「重版」、「再版」、「増刷」と呼ばれ、改訂とは区別される。
判型(はんけい)
「判型」とは、本のサイズ、大きさのこと。
同じ判型でも、書籍によってサイズが異なることがある。
【主な判型一覧】
- ・A4判 210×297
- ・A5判 148×210 ※文芸誌
- ・A6判 105×148 ※文庫
- ・B4判 257×364
- ・B5判 182×257 ※週刊誌
- ・B6判 128×182
- ・菊倍判 218×304、227×304
- ・国際判 215.9×279.4(8½×11インチ)※「A4変形」とも
- ・AB判 210×257
- ・菊判 152×218、152×227
- ・四六判 127×188
- ・B40判 103×182 ※新書 105×173の場合も
- ・ポケット・ブック版 106×184
(早川書房の「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」で使われている) - ・三五判 84×148
- ・八折り判
- ・HL判
落丁(らくちょう)
「落丁(らくちょう)」とは、書籍などの印刷物において、一部のページが抜け落ちてしまうこと。
乱丁と混同してしまいがちだが、乱丁は本のページの順番が入れ違っていることを指す。
本の奥付には「乱丁・落丁はお取り替えします」といった文言が見られるが、乱丁・落丁した本は購入した書店で原則、取り替えてもらうことができる。
乱丁(らんちょう)
「乱丁(らんちょう)」とは、書籍などの印刷物において、製本の際にページの順番がばらばらに綴じられてしまうこと。本のページの順番が入れ違っていることを指す。
落丁と混同しないこと。落丁は本の一部のページがそっくる抜け落ちていることを指す。
誤植(ごしょく)
「誤植(ごしょく)」とは、印刷物における誤字・脱字のこと。ミスプリント。タイプミス。
初版(しょはん)
「初版(しょはん)」とは、出版された書籍の最初の版のこと。
初版のうち、最初に印刷されたものを「1刷」という。
初版が同じ内容で重版された場合の奥付の表記は「初版第◯刷」(◯は重版の回数)となる。
初版が改訂され重版された場合の奥付の表記は「第◯版◯刷」となる。
初版は誤植や乱丁などのミスが見られることが多い。そのため、内容の訂正などが成されないままの状態で世に出されるため書籍の愛好家の間では初版にプレミアがつく事がある。
ただし、これは全ての本にいえることではなく、あくまで初版の刷り部数が少なく、かつその本が後に高い価値を得た場合のみである。
重版(じゅうはん)
「重版(じゅうはん)」とは、初版と同じ版で、同じ大きさ(判型)、同じ装丁で新たに刷ること。増刷ともいう。
重版が刷り上がって販売されることを「重版出来(じゅうはんしゅったい)」という。
重版の場合、改訂版とは違い内容は同じものであり、ISBNも同じものが使用される。

絶版(ぜっぱん)
「絶版(ぜっぱん)」とは、出版社が発行を終了した本のこと。また、これ以上増刷、重版しない本のこと。絶版本。
コンスタントに売れる定番本などは、増刷が続くが、販売が伸びない書籍は絶版となる。
発行が終了している絶版本は手に入れづらくなるため希少価値がつくこともある。
絶版する理由には主に以下の項目が該当する。
- ・これ以上の売れが期待できない。売り上げが伸びない
- ・出版したあとに、内容に問題があることが発覚した
- ・本の著者が絶版の意向を示した
- ・出版社の倒産によるもの
- ・出版された本に関することで不祥事や事件が起きた場合
品切重版未定という言葉が存在するが、これは出版社に在庫がない状態を指す。
出版社がこれ以上の売れ行きが見込めないため、品切れ状態を継続して増刷を行っていない状態であり、絶版とは区別される。
社会的な事件や、大きな話題になった場合に品切重版未定の本を改めて発行されることがある。
最近は電子書籍の普及によって絶版という考え方が少しずつ変わってきている。
取次(とりつぎ)
「取次(とりつぎ)」とは、出版社と書店の間をつなぐ流通業者。出版の卸売業。
出版社は取次に本を流通させ、書店は取次から本を仕入れるという委託販売制度を取り入れている。
国内の取次会社は100社あまりと推定されているが、実際のシェアは上位2社の日本出版販売(日販)とトーハンで70%以上を占めている。
- 【国内主要取次会社】
- ・トーハン
- ・日本出版販売(日販)
- ・大阪屋
- ・栗田出版販売
- ・JRC
- ・太洋社
- ・地方・小出版流通センター
- ・中央社


トーハン
「トーハン」とは、日本の出版物専門商社。東京都新宿区に本社を置く。
国内では日本出版販売と並んで二大取次会社となっている。
2000年11月にはオンライン書店、全国書店ネットワーク「e-hon」オープンさせ、ネットにおける書籍の販売にも力を入れている。
2012年12月には株式会社ブックファーストの株式を阪急電鉄より購入し、子会社化した。
大阪屋(おおさかや)
「大阪屋(おおさかや)」とは、日本の出版取次会社。大阪府大阪市に本社を置く。
日本出版販売、トーハンに次いで国内では3位のシェアとなっている。
2009年には業界4位の栗田出版販売と業務提携をし、出版業界の再編を加速させている。
2013年には経営不振が響き、東京支社の自社ビルを売却。経営の立て直しを図る。
2016年4月より「株式会社大阪屋栗田OaK(オーク)出版流通」が発足。大阪屋が栗田出版販売を統合した。

日販(にっぱん)
「日販(にっぱん)」とは、日本の出版取次会社であり、日本二大出版取次会社の1つ。日本出版販売株式会社。
オンライン書店の「Honya Club.com」を運営している。
日販加盟店ではポイントカードを発行している店舗もある。
加盟店舗ではNOCSという端末を利用する事ができ、これを使って書籍の注文や返品などを行う事ができる。

太洋社
「太洋社」とは、かつて存在した取次会社のこと。
1946年に中央区銀座にて太洋社創業。創業者は國弘直。
取次業界は日販とトーハンが70%以上のシェアを占めており、太洋社は差別化が難しい取次業界において厳しい状況に立たされていた。
2016年に取引先に対して自主廃業を通知。2017年12月に法人格消滅。

栗田出版販売
「栗田出版販売」とは、出版取次会社のこと。
大正7年6月1日に栗田書店として創業。
出版取次としては、日販、トーハン、大阪屋に次ぐ第4位の売り上げをあげていた。
しかし、実際には取次業界としては日販、トーハンが取次全体の70%を占めていると言われており、業績は厳しい状態にある。
現在は大阪屋と栗田出版販売が統合し「大阪屋栗田OaK出版流通」となっている。
責任販売制
「責任販売制(せきにんはんばいせい)」とは、出版に関わる三者(出版社・取次・書店)が仕入れや返品について一定の条件を守らなかった際にペナルティを課すという取り決め。
それぞれが取り決めを守るため、一般的に書店側に仕入れや返品について一定の条件を課す代わりに、マージンの引き上げや希望数を出荷するなどを与える取引方法のことを指す。
一般的な委託販売制度(書店側が売れない本は取次へ自由に返品できる制度)は書店側にリスクはないが、返品の増大は出版社に負担を強いる事となっていた。
そこで出てきたのが責任販売制である。
責任販売制はSCM銘柄を指定し、出版社・取次・書店が返品率や利益率などを取り決める。
フリー入帳
「フリー入帳」とは、書店が自由に返品できる条件で仕入れる本のこと。
書店は取次や出版社と様々な条件をもとに書籍を仕入れる。
注文品や買い切り品の場合は返品ができないが、フリー入帳の場合は原則、自由に返品をする事ができる。
部戻し
「部戻し」とは、出版社が取次へ本を卸した時に売り上げ金額から差し引かれるもの。
部戻しの割合は本体価格の3〜5%とされ、これは取次会社によって異なる。
出版社は正味で取次に本を卸すが、部戻しはその正味に上乗せするかたちで取次に差し引かれる。
例えば、1000円の本の正味が67%の場合、この本が売れた際には取次から出版社に670円の支払いが行われる。
しかし、ここに部戻しが発生すると3〜5%分はさらに取次に差し引かれるため、正味の67%-3〜5%=64〜62%(640円〜620円)に減額される。
つまり、出版社は部戻しの分だけ受け取る金額が減ることになる。
この部戻しは出版業界の慣例として行われている側面が強く、出版社と取次の交渉次第ではこの部戻しを無くしたり減らしたりする事が可能であると言われている。
SCM銘柄
「SCM銘柄(えすしーえむめいがら)」とは、日本出版販売株式会社(日販)が「責任販売制」を実施するために選定する書籍のこと。
SCM銘柄に選定された本は書店・取次・出版社が手を組んで販売の伸長を図ることになる。
書店はSCM銘柄を積極的に販売する責任を負うが、SCM銘柄に指定された本を注文すると、注文した冊数(満数)をほぼ確実に仕入れることができる。
出版社は取次の倉庫や書店に対しての注文に満数で出荷をする責任を負うが、SCM銘柄に選定された本の返品を減らすことができる。
取次(日販)は自社の倉庫にSCM銘柄を一定数、潤沢な在庫を常にストックしておく必要があるが、返品を減らすことができる。
SCM銘柄に選定されるためには、日販のランキングで上位を一定期間キープする必要があり、売れ行きが良いことが前提となる。
グロスチャージ契約
「グロスチャージ契約」とは、株式会社MPDが導入する書籍の仕入れに関する施策。
書店が商品を実際に販売すれば、その販売額の一定割合を出版社が「インセンティブ(報奨金)」として書店に支払う。
反対に書店から返品が発生した場合、返品額の一定割合を「ペナルティー」として書店が出版社に支払う。
この施策により、書店は本をした分だけ報奨金を得ることができ、取次は返品率を下げることができる。そして出版社は報奨金の負担はあるものの、それ以上に本の売り上げを伸ばすことができる。
このように、それぞれにメリットのある施策ではあるが、書店は返品を抑制しようとするあまり在庫を余分に抱えてしまうという一面もある。
MPD(株式会社MPD)
「MPD」とは、TSUTAYAをメインに本やCD・DVDを供給する販売会社。株式会社MPD(Multi Package Distribution)。
日本最大手取次の1つである日販(日本出版販売株式会社)が51%、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)が49%の株式を保有している。
MPDが導入を促した「グロスチャージ契約」は書籍の返品率を下げる施策として注目されている。
再販売価格維持制度
「再販売価格維持制度(再販制度)」とは、メーカー(出版社)が小売り(書店)に対して、商品の販売価格の変更(値引きなど)を許さずに定価で販売させること。
再販売価格維持は自由な価格競争を妨げることにつながるので、本来は「独占禁止法」という法律で禁止されている。
しかし、例外的に一部の商品に関しては同じ価格で販売させることを認めている。
その1つがCDや書籍などの文化的な価値のある商品である。こうした商品の値引きを認めてしまうと、文化の保護ができない。
そのため、日本では再販売価格維持制度が採用されている。

装丁(そうてい)
「装丁(そうてい)」とは、製本の仕上げとして、書物の表紙・扉(とびら)・カバーなどを施し、本としての体裁を整えること。
また、表紙・裏表紙そのものを指すこともある。装丁を制作する人のことを「装丁家」などと呼ぶ。

新書
「新書」とは、各出版社が装丁を統一させて刊行するもの。新書サイズは103×182。
新書は単行本よりも原稿分量が少なくて済み、装丁や本文のデザインも統一されている事が多い。そのため、原稿ができてから刊行までの期間を短くする事ができる。
また、カバー等を統一することでコストを下げることができるのもメリットの1つである。
延勘(のべかん)
「延勘(のべかん)」書店が取次に払う仕入勘定を先延ばしにする契約のこと。
契約条件は様々あり、勘定を3ヶ月延ばすことを「3延(さんのべ)」などと呼ぶ。
延勘は書店で大規模なフェアが行われる場合などに適用される。書店は本をまとめて仕入れるときに資金がかさむため、代金の支払いを延期することで本を仕入れるハードルを下げることができる。
また、代金の高額な本に関しても適用されることがある。
セット品や高額品の場合は書店から出版社に対して延勘を依頼することもある。
出版社の営業が書店でフェアを開きたいときに使う、「延勘にするので、どうですか?」というフレーズは常套句である。
帳合(ちょうあい)
「帳合(ちょうあい)」とは、出版社と書店の間を取り持つ取次会社のこと。卸業者。
書店は通常、1社の取次会社と契約をするが、大型書店の場合は様々な帳合と契約をすることがある。これを「複数帳合」と呼ぶ。
また、書店が取次を変えることを「帳合変更」という。

断裁(だんさい)
「断裁(だんさい)」とは、出版社が返品された、あるいは過剰在庫になった書籍や雑誌を廃棄処分すること。断裁処理。切り落とし。
断裁された本は古紙業者に回されリサイクルされる。
面陳(めんちん)
「面陳(めんちん)」とは書籍の表紙を見えるようにして陳列すること。
書店の本棚の形状によっては、平積みにして陳列される。新刊本や売り上げの好調な本を陳列することが多い。
反対に棚に差すことを「棚差し」、「差し」と呼ぶ。
面陳は書店でより目にとまりやすいので、販売を伸ばすために行われる。
棚差しと面陳では本の売り上げが大きく異なるため、書店は売りたい本を厳選し、読者の目にとまるようにしている。
出版社の営業は、書店からの注文冊数を増やすことにもつながるので積極的に面陳や平積みを提案することが多い。
スリップ(短冊)
「スリップ」とは、書籍のあいだに挟まっている、短冊状の紙のこと。slip。
2つ折りになっており、一面は注文票(補充用)として、もう1面の売上カードは売上管理や販売報奨券として使われる。
現在、書店の在庫管理はコンピュータ化されていることが多いが、スリップによって本の販売管理を行っている店舗もある。
スリップは基本的にレジで抜き取られる。万引きを判別するために役立つこともある。

正味(しょうみ)
「正味(しょうみ)」とは、書籍の仕入れ値のこと。
出版社が取次に販売(卸売り)する値段を「版元出し正味」、取次が書店に販売する値段を「出し正味」という。
例えば、正味が本体価格(1000円)の67%の場合、1000円の本を出版社が取次に卸すと670円が取次から出版社が支払われる。この670円が出版社の取り分となる。
シュリンク
「シュリンク」とは、書籍やコミック、写真集などにかけられるビニールのこと。
英語の「shrink」(縮む、縮ませるの意)から。
立ち読み防止や、本が汚れないようにすることを目的とする。
書店が入荷した本を機械を使って「シュリンク」を施す場合と、入荷した時点からシュリンクされている場合がある。
多くの場合、書店にシュリンクの機械があり、本が入荷してからシュリンクを施す。
書タレ(ショタレ)
「書タレ(ショタレ)」とは、返品期間が過ぎ、書店が取次に返品できなくなった書籍のこと。
委託販売制度によって委託期間が決まっているが、これを過ぎてしまうと、取次や出版社に返品しても逆送品となってしまう。
書店の不良在庫になってしまうため、管理には注意を払う必要がある。
本は種類によって返品できるまでの期間が異なる。
- ・新刊委託(新刊)は仕入れてから3ヶ月は返品可能。
- ・注文品・客注品は買い切り(実際はほとんどの版元がフリー入帳)
- ・雑誌は週刊誌が発売されてから2週間。月刊誌は発売されてから45日間。
返品(返本)
「返品(返本)」とは、書店が取次に書籍を返品すること。
委託販売制度によって、基本的に書籍は自由に仕入れ、自由に返品することができる。
返品は普通委託(新刊・重版委託)、長期委託、常備寄託などの条件が存在し、条件によって返品の期限が異なる。

常備寄託(じょうびきたく)
「常備寄託(じょうびきたく)」とは、出版社、取次、書店が契約を交わし、一定期間のみ商品を陳列すること。実務上は単に「常備」と呼ぶことが多い。
書店は常備寄託に指定された本については期間中、返品することができない。常備の寄託期間は通常、1年間が多い。
常備寄託の本が売れた場合、書店はすみやかに該当する本を仕入れる必要がある。
本の仕入れ代金は、その本が売れた段階で支払いが発生する。書店は仕入れの段階で代金を払う必要がないので資金繰りに関してメリットがある。
一方、出版社は常備寄託の期間中は返品されることなく本を書店に並べることができる点でメリットがある。
常備寄託の本は定期的に入れ替えが行われるため、特に大型書店の場合は常備寄託の入れ替えが大変な作業となることが多い。
客注
「客注」とはお客さんからの注文を指す。
書店の客注は基本的に注文後、キャンセルできないことが多い。
書店は客注が入ると、取次ならびに出版社に在庫を確認する。
取次に在庫がない場合は本を出版社から取り寄せるので、通常よりも到着までに日数がかかる。
日数は書店によって異なるが1週間〜2週間かかることが多い。
書店が出版社に注文をするときは、番線を出版社に伝え、搬入日を確認したのち、お客様に本の到着日を伝える流れとなる。

買い切り
「買い切り」とは書店が取次や出版社から仕入れを返品不可の条件で買い取ること。
委託販売制度では返品ができるが通常だが、一部の出版社(岩波書店など)や書籍は買い切り条件で仕入れることがある。
買い切りの商品は客注品にも適用される。客注品は読者が注文した商品のため、書店員の判断で仕入れたものでない。そのため不良在庫となる可能性がある。
また、出版社は委託制度による資金繰りをしているため、新刊を出すことにより自転車操業を行っている出版社にとっては買いきり制度が導入されると危機に陥る可能性がある。
番線
「番線」とは、書店が取次との取引に使う番号のこと。
取次会社が各書店に番号を割り振る。
基本的に書店にスタンプ(番線印)があり、取次が書店に書籍を納品するときに番線を伝えることで書店を識別して配本している。
書店営業を行った際には、注文票などに番線印を押してもらい、出版社はその番号を元に取次経由で書店に納品を行う。
基本的には1つの書店に対して1つの番線が割り振られるが、規模の大きな書店ではジャンルやフロアごとに番線が異なることがある。
また、客注番線と呼ばれる、客注品のみに使用される番線も存在する。
指定配本
「指定配本(していはいほん)」とは、出版社が取次に対して書店ごとに何冊配本を行うかを指定すること。
実務上は「指定」あるいは「配本」と略されることが多い。
新刊を配本するにあたり、販売の効率化を図る手段として、売り上げの良好な書店に配本数を多くする場合に行われる。
新刊は書店からの注文がない場合でも、取次が書店のデータや過去の動向などからどれくらいの配本を行えばいいかを決定するため、売れ行きの期待値の高い書店には半ば自動的に新刊が配本される。
つまり、書店は注文を出していなくても自動的に新刊が届くことがある。これは、取次による配本システムによるものである。
搬入日
「搬入日」とは、書籍や雑誌が取次に納品される日こと。
出版業界においては、商品が書店に到着するまでの日数が明確ではない。
例えば書店で本を注文した時にも「商品の到着まで1週間〜2週間かかる」とされている。
そのため、実務上は本が書店に到着する明確な日にちではなく、取次に本が納品される「搬入日」を基準に日数のやりとりがされる。
日販パートナーズ契約
「日販パートナーズ契約」とは、日販が本の返品率を下げ、売り上げを向上させるための施策。
版元が日販に料金(報奨金)を支払い、自社の本を売り出してもらう。
書店は日販パートナーズ契約に従って本を販売し、該当する本を販売する事で出版社から報奨金を受け取ることができる。
この契約における三者のメリットについては以下の通り。
- 【出版社】
- 報奨金を支払うことで、自社の本を日販に優先的に売り出しをしてもらう事ができる。
また、返品率が下がり、本の販売を伸ばすことができる。
- 【日販】
- 報奨金は基本的に全て書店に配分されるが、書店からの返品率を下げることができる。
- 【書店】
- 該当する版元の書籍を販売する事で、売り上げ金額に上乗せするかたちで報奨金を受け取ることができる。
見本出し
「見本出し」とは、出版社が取次の仕入窓口へ新刊を提出すること。
出版社が「こういう本が新刊で出ますので、書店への配本をお願いします」と説明をしに行くこと。
取次の仕入窓口の担当者は、出版社からの仕入れ希望部数とその見本をもとに仕入部数を決定する。
仕入れ部数が決まると、取次は出版社に部決(部数決定)の連絡を行い、新刊の搬入となる。
部決(部数決定)
「部決(部数決定)」とは、出版社の新刊の仕入れ部数を取次が決めること。
出版社は新刊の見本出しまでに注文を集め、その受注数をもとに取次に対して仕入れ希望部数を提示する。
その提示(受注数)や書籍の売れ行きを予測した上で、取次は新刊を何部仕入れて配本するかを決定する。
取次は仕入れ部数を決めると、出版社に「今回の新刊は◯◯部仕入れます」と連絡を入れる。
この部決は新刊の配本がどれくらいの規模で行われるかに関して大きく影響を及ぼす。
より多くの部数を取次に配本してもらったほうが多くの書店の店頭に新刊が並ぶことになるので、出版社としては仕入れ希望部数通りに部決をしたい思惑がある。
音羽グループ
「音羽グループ」とは、講談社とその傘下にある光文社、星海社、キングレコード、日刊現代などを中心とする出版グループのこと。
「音羽」という名前は講談社の本社所在地である東京都文京区音羽に由来する。
この音羽グループに対して、出版業界には小学館、集英社をはじめとする一ツ橋グループが存在する。

一ツ橋グループ
「一ツ橋グループ」とは、日本の出版社である小学館と集英社で構成される出版系列である。
小学館は主に小学生向け雑誌等の出版を行っていたが、娯楽雑誌を発行する部門として集英社を創設した。
のちに、小学館も娯楽雑誌部門に進出し、現在両者は競合関係にある。
一ツ橋グループという名称は小学館および集英社の本社がある東京都千代田区一ツ橋の地名に由来する。
一ツ橋グループは他に祥伝社、白泉社、プレジデント社、照林社などで構成されている。
出版業界には他に音羽グループ(講談社&光文社)が存在し、一ツ橋グループと二大派閥を形成している。
週刊誌などでは、講談社のフライデーを中心に小学館との対立が目に見えてわかるような記事を取り上げることも多い。