わたしは定期的に「人見知りを直したくなる病」にかかるのですが、『社会人大学 人見知り学部 卒業見込み』と出会ったのは、その病を発症し、Amazonで「人見知り」と検索したときのことでした。
オードリーの若林さんは、アメトーークでも披露した「人見知り」で多くの共感を得て、いわば人見知りを武器にしてのし上がった人です。
あくまでもエッセイという体裁をとっている本書ですが、内容を読むと自己啓発書に包含されうるような文章がたくさんあります。内容に共感するとともに、身になる話が盛りだくさんです。
自己啓発書と聞くと意識高い系が読む本だとか言われて馬鹿にされますけど、じつは私はけっこう好きで読んでます。
最近はあまり読まなくなりましたが、タイトルがあからさまに自己啓発っぽい本も若い頃はたくさん読みました。『人生で成功するための◯つのヒント』的なやつです。
この本は、若林さんが日常で体験したことや発見したことが題材になっていますが、基本的にネガティブな視点から書かれているんですよね。
このネガティブ感のいいところは、ネガティブすぎないところ。つまり、ネガティブの温度感がちょうどいいんです。
ネガティブな話なんて誰も聞きたくないですよね。でも、ネガティブな話って笑いに昇華させるととてつもないパワーを生むと思うんです。
この本は、思わず笑えるようなネガティブ話が満載です。そして、ネガティブな体験を通して自分を見つめ直し、それをどう改善するか(どう物事を考えればいいか)ということも多々書かれています。
書かれている文章は若林さんのごく個人的な体験や意見ばかりなのですが、それがあることでそこいらの自己啓発書よりもはるかに説得力があり、読んでて深く入り込めるんですよね。
エッセイを読むときって、作者に共感するのがひとつの楽しみ方だと私は思っているんですけど、共感性という意味ではバッチリな一冊でした。
著者に共感できないエッセイは読んでてもつまらないですからね。というか、読んでても苦痛です。
あれだけテレビで活躍する裏側にはとんでもない葛藤とか悩みがあるんだなと痛感させられるし、それを包み隠さず書いてあるので、読むだけで救われる感があります。サルベージ。
この本を読んで人見知りを治すというよりは、「人見知りのままでも良いんだなぁ」という方向転換をさせてくれる本です。
またいつか「人見知りを直したくなる病」に罹患したら、読み返したいと思います。