本は一人で楽しむもの。
それがいわゆる本の在り方です。
とはいえ、読んだ本の感動や面白さ、時にはつまらかった話を共有したいときだってあります。
でも、読んだ本について一緒に盛り上がれる仲間というのはなかなか見つからないもの。
どんなに仲の良い友人であっても、同じジャンルの本が好きとは限りません。
ですから、日常の中で共通の本の話題で盛り上がる機会は意外と少なかったりします。
そんなときに活用したいのが「読書体験をシェアする場所や方法」。
今回紹介する『TOKYO BOOK SCENE―読書体験をシェアする。新しい本の楽しみ方ガイド』(玄光社)はそんな実例が満載の本です。
読書体験をシェアする方法はこんなにたくさんある
本書を読んで感じたのは、読書体験を他の人と共有するための方法はこんなにたくさんあるんだな、ということです。
改めて気付かされました。それまではせいぜい読書会、しかもごく親しい友人を集めて本の感想を語り合うくらいのものだと考えていました。
本というものを広く捉えて、いろんな可能性があるということを教えてもらった気がします。
本書が紹介しているのは以下の4つです。
- 1、本屋でつながる
- 2、ブックカフェでつながる
- 3、読書会でつながる
- 4、ブックフェスティバルでつながる
1、本屋でつながる
本屋でつながる。その最たる例が「イベント」です。
本屋でのイベントというと、多くの場合が新刊発売イベントなどと思われがちです。
しかし、それは大型書店であることがほとんど。
中小の個人書店では、独特のイベントを手がけていることも少なくありません。’
たとえば下北沢のB&B。非常に有名で、もはや説明不要でしょう。
B&Bはなんと毎日イベントを開催しています。
仕掛け人の内沼晋太郎さんは著書『本の逆襲』において、本でつながること、そして収益的な面からもイベントは重要であると述べています。
本屋でのイベントというと、プレゼンター1人の話を参加者が聞くスタイルがほとんどです。
しかし、B&Bでは鼎談(ていだん:3人が向かい合って話し合うこと。転じて座談会の意)や対談の形式をとっていることが多い点も見逃せません。
その他にもSPBS、BOOK246、青山ブックセンター、紀伊國屋新宿南店、東京堂神保町店、百年など本屋好きは絶対に知っておきたい多くのお店が本書では紹介されています。
2、ブックカフェでつながる
ブックカフェと聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか?
わたしは実をいうとブックカフェというものに対しては否定的です。
以前、本をただの「お飾り」に使うブックカフェに怒り心頭のエントリーでも述べましたが、ブックカフェというのは往々にして本を「飾り」として使っています。
とはいえ、本書の中で紹介されているブックカフェは趣向をこらしているお店が多いので興味深い。
特に、日本近代文学館の館内にある「BUNDAN COFFEE & BEER」は要チェックです。
店内の写真を見る限りでは典型的なブックカフェです。
わたしはてっきり「ただのお飾りブックカフェじゃないか!」と怒号をかましかけました。
ところがビックリ。この店のウリは空間だけではないのです。
なんとここでは文学作品で登場する料理を実際に食べることができます。
わかりやすく言うと、たとえば村上春樹の作品で美味しそうに描写されている料理を実際に味わうことができるのです。
これらのメニューは単にイメージだけで作られているのではなく、綿密な下調べを行ったうえで再現されています。
文学作品で「これ食いたい!」と思ったものをリクエストしたら、再現してくれるサービスがあったら面白いですよね。
高円寺にある古本酒場コクテイルでも、同じスタイルで本や時にはマンガ作品に出てくる料理をモチーフにしたレシピを味わえます。
3、読書会でつながる
読書体験をシェアするという言葉をストレートに表現するのが「読書会」です。
定期・不定期、場所もそれぞれの読書会。大小問わず、たくさんのコミュニティが存在します。
そんな読書会の中でも特に有名なのが猫町倶楽部です。
名古屋の小さなコミュニティからはじまったこの読書会は今や会員数5000人を超える、巨大なコニュニティとなっています。
参加条件はただ1つ。それは課題本を読了していること。これだけです。
猫町倶楽部はビジネス系の「アウトプット勉強会」と文学系の「文学サロン月曜会」に分かれています。
読書体験をシェアすることの最大のメリットは「同じテーマの本を読んでいるのに、まったくちがう発想を得られる」ことにあります。
少しハードルが高いかもしれませんが、思い切って参加することで開ける世界がきっとあるはずです。
4、ブックフェスティバルでつながる
最後はブックフェスティバルです。
言葉だけではイメージがわきにくいですが、わかりやすくいうと即売会のような感じです。
とはいえ、本書で紹介されているブックフェスティバルは単なる即売会ではありません。
本を販売する中にもきちんとつながりを持たせています。
不忍ブックストリートの一箱古本市は、「谷根千」地域の軒先を借りて開催されます。
参加者である店主はそれぞれダンボール一箱分の本を販売します。
そこで生まれるコミュニケーションは普段の本屋では味わえません。
なぜなら、そこにある本は店主の人が買ってきた、その人の人生でもあるからです。
この本はどこがオススメなのか?
そもそもなぜ売りに出してしまうのか?
なにか問題が…あるの?
と、もしかしたら思わぬディープな話になってしまったり…(笑)
それも一箱古本市の楽しみ方の1つかもしれません。
一箱古本市についての詳細は誰もが本屋になれる!「一箱古本市」とは?を参照ください。
読書体験のシェアまとめ
調べてみると、本当にいろいろあるなと感心してしまいました。
読書会に限らない、本の強みが存分に表現されているものばかりです。
ひとまず、わたしは猫町倶楽部にでも参加してみようかしら…。