東京の「変な外国人」から語学を学ぶメンタルの強さ『異国トーキョー漂流記』

東京の「変な外国人」から語学を学ぶメンタルの強さ『異国トーキョー漂流記』 おすすめの和書

日本で外国人を見かける機会は増えましたが、ほとんどの日本人の語学力は変わっていない気がしています。

なぜなら、日本語で十分に生活ができてしまうから。日本語以外の語学を学ぶモチベーションが生まれないんですよね。

でも、世界を旅する冒険家にとって、語学習得というのは非常に大きな意味を持ちます。語学力が冒険の成否を決めるといっても過言ではないですから。

習得したい語学が英語ならまだしも、マイノリティな言語だったらどうするか?

それだったら、「東京に住む外国人にレッスンをお願いしちゃおう」というのが、本書『異国トーキョー漂流記』のすごさです。

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京王線で隣に座ったフランス人にレッスンを

著者の高野秀行さんは「辺境ライター」を自称する、冒険家です。その名のとおり、世界の辺境を旅していて、その記録は数多くの本として出版されています。

さて、冒険家にとってとても大事なのが言語の習得です。知らない土地を旅するうえで、言葉を使えるかどうかは非常に重要なカギとなります。

最近でこそ、フランス語やスペイン語などの言語を学ぶ環境が整いつつありますが、一昔前はなかなかハードルが高かったんですよね。ネットのない時代ともなればなおのこと。

高野さんは次の冒険でフランス語が必要になり、どうやってフランス語を習得するか悩んでいました。

そんなある日、大学の授業終わりで乗った京王線で隣に座っている若い女性がフランス語の本を読んでいることに気づきます。

そこでなんと高野さんは、そのフランス女性に話しかけて、週に1回のフランス語レッスンの約束を取り付けてしまうのです(しかも、電車の中)。

冒頭からこんな感じで、高野さんの語学習得への貪欲な姿勢とメンタルの強さに僕はガツンとやられてしまいました。

見知らぬ日本人に話しかけるのですら恐怖なのに、外国人でさえ平気で声を掛けてしまう行動力。

この時点で、高野さんのただならぬ「人としてのデカさ」を感じずにはいられませんでした。

文字のない言語「リンガラ語」を覚えるために

中学校で最初に英語を学んだ頃を思い出すと、すごい懐かしい気持ちになりませんか?

アルファベットの書き方から始めて、スラスラとABC…が書けるようになったあの達成感が、僕は今でも忘れられません。

と、こんな具合に語学を習得するときはたいていその言語に特有の「文字」を覚えることから始めるのが当たり前です。日本語なら「ひらがな」から始まりますよね。

しかし、世界には文字のない言語というのがありまして(というより、世界には文字のない言語のほうが多いらしい)、そのひとつがアフリカのコンゴ川流域で使われている「リンガラ語」です。

文字がない言語というのは、英語でいうところの「ABC…」がなく、喋るときの口頭でしか使われない言葉です。

次の冒険でリンガラ語習得が必要となった高野さんは人のつながりを頼りに、リンガラ語が話せるウィリーという名前の外国人講師を見つけ出します。

いざレッスンを受けるものの、文字がないから教えようがないという難題に直面。黒板に書いて説明することもできません。さあどうするか。

アレコレといろいろ悩んだ挙げ句、リンガラ語をアルファベットで表記するというアイデアが生まれます。

つまり、リンガラ語の発音をABCで表記することで何とか”文字化”することに成功するのです。

そして高野さんはリンガラ語を無事に習得し、旅先でも大いに役立てました。めでたしめでたし。

…と書くのは簡単なんですが、実際に考えると凄まじいことをしているんですよ。そもそも文字もない言語を習得して、ちゃんと現地で使いこなしているわけですから。

1987年の夏から秋にかけて、私は後輩Mと二人で初めてコンゴを訪れた。ウィリーに教えてもらったリンガラ語は思った以上に役に立った。リンガラ語を話す外国人など皆無に近かったので、私たちはどこへ行っても大人気だった。

と、こんな具合。リンガラ語を習得したことで、現地人から人気を得るところまでいっちゃってるわけです。

しかも1987年なんて、インターネットがない時代ですからね。純粋に語学への貪欲さもスゴいんだろうけど、高野さんには言語を習得する天性の才能があるんだろうとも思います。

英語の勉強に対するモチベーションが変わる

英語を勉強しているけどなかなか身につかなくてツラい思いをしている大人はたくさんいると思います。

でも、高野さんの文章を読んでいると、英語に苦心している自分が馬鹿らしくなってくるんですよね(良い意味で)。

なんというか、もっと体当たり的な言語学習をしてもいいのかなと。社会人になって「英語のやり直し」ってなると、だいたい本を買って文法の勉強から始めるじゃないですか。

でも、よくいう話だけど、言葉って結局コミュニケーションが取れればそれでOKなんですよ。

長く英語を勉強しているとそのことを忘れがちになるけど、この本を読んだことで「もっと英会話とか体当たり的に取り組んでみようかな」と思わせてもらえました。

さすがに街に出て外国人に話しかけるのはハードルが高いにしても、オンライン英会話でひたすらに喋りまくるというやり方をしてもてもいいのかも。

この本は語学習得を通じて、東京に住む外国人とのアレコレが描かれています。エッセイとしてもかなり面白いので、本当に読んで欲しい1冊。笑えるエピソードも盛り盛りです。

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アユム

1988年、千葉県生まれ。書店と出版社を経て、ライターとして活動中。2017年より株式会社ミシェルベース代表取締役。

【読みたい本が見つかる】をコンセプトに、洋書・和書のおすすめ本をご紹介。「読書が大好きで、洋書も気になるし、英語も身につけたい」。そんな欲張りな人(自分含め)に向けて記事を書いています。

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